Capricious

自分の気まぐれさを愛したい

干支6回分

 

 

ほんのり生あたたかい空間に、

扇風機の羽のみ回っていた。

突起を押せば首も回るものを強引に

自分のほうに向けた。

 

重石が乗ったような身体で椅子にドサッと座る。

古びた軋む音を鳴らし私を受け止めた。

今日は何だか動作のひとつひとつに、

自分の根にあるものを感じた。

 

咳払いをし、頬杖をつく。

 

こんな朝に祖母へ送る手紙を書いている。

祖母の雰囲気に合った花柄の便箋を下目に

下書きもなしに筆を走らせる。

 

 

『おばあちゃんへ

先日は夜ごはん振舞ってくれてありがとう。

おばあちゃんの手料理が好きです。…』

 

特に冬に作ってくれるシチューが好きです。

一緒に出してくれるパンにつけるのが好きです。

あ、今は夏なんだけどね

そんなことを脳内で思いながら書き進めた。

 

 

 

小さな箱に何が入ってるのだろう、

そんなことを想像するのが好きだ。

自分の口から全てを説明してしまうのは

なんだかつまらない。

1文にたくさんの思いを詰め込んだ。

 

 

手紙を書き終えて倒れるようにベッドで寝た。

短針は2つほど進んでいた。

 

なんだか外に出たくなり重たい窓を開けると、

一瞬の熱気で部屋の涼しさは忘れてしまった。

快適を知るとそれに縋ってしまう。

 

スマートフォンで夏の写真を見る。

写真家の撮る夏のフィルム写真の1枚が素敵だ。

手軽な夏を味わった。